比較の練習 / 9分で読む
ワイン2杯を比較する練習法|ブラインドで違いを見つける
ワイン2杯でできる比較テイスティング。ワインの選び方、条件の揃え方、色調・香り・味わいを並べて記録する手順と、答え合わせの読み方を紹介します。

この記事でわかること
1杯だけを飲んで「酸味が強い」と書こうとしても、何と比べて強いのか迷うことがあります。そんなときに試したいのが、2杯を並べて観察する練習です。「こちらの方が口の中が引き締まる」「同じ赤い果実でも、もう片方は熟した印象がある」。隣にもう一杯あると、比較の言葉を探しやすくなります。
最初から何本も揃える必要はありません。比べたいことをひとつ決め、2杯を同じように記録し、最後に名前を確かめる。この記事では、自宅で実行できる比較の手順と、記録から読み取れることの範囲を整理します。
まず「何を比べたいか」をひとつ決める
ワインを選ぶ前に、その日の問いを決めます。「同じ品種で、産地が違うと自分の記録はどう変わるか」「軽いと感じるワインと重いと感じるワインでは、どこを違って感じるか」。具体的な問いがあると、答え合わせで見る場所が定まります。
初めてなら、赤と白を混ぜるより、赤同士か白同士で試すと、色の大きな違いだけに意識が向かいにくくなります。細かな産地を言い当てる課題まで増やさず、まずは酸味、香り、口当たりなど、感じた差を言葉にする練習として取り組んでみてください。
ワインの組み合わせには、たとえば次のような考え方があります。どれも、比較を始めるための問いです。
- 同じ品種、違う産地: 共通する印象と、異なる印象を探す。
- 似た価格帯、違う品種: 自分が香りや口当たりのどこに注目するかを見る。
- 以前飲んだワインと、今回の一杯: 過去のコメントと現在の観察を比べる。同時に飲む比較とは区別する。
国だけを変えたつもりでも、生産者、収穫年、熟成、造りなどは異なります。「この2本で違ったこと」を、そのまま「この国のワインはすべてこうだ」に広げないようにします。比較は、次の仮説を作る手がかりになります。
グラス、量、注ぐタイミングを揃える
2脚とも同じ形の透明なグラスを使い、同じくらいの少量を注ぎます。違う形のグラスしかなければ、そのことを記録しておきましょう。片方だけ注いでから長く置くなど、提供条件が大きく変わらないようにすると、観察に集中しやすくなります。
テーブルには白い紙と水を置き、グラスに1と2の目印を付けます。ボトルのラベルは隠し、誰かに用意してもらうなら、どちらに何を注いだかを別の紙に控えてもらいます。自分で選んだ場合は、すでに知っている情報もメモしておきます。
慣れないうちは、友人と同時に答えを言わず、まず各自で書く方法が使えます。誰かの「バニラがする」という一言を聞く前の印象が残るからです。その後でコメントを見せ合えば、同じ一杯をどう違って感じたのかも話せます。

ひとつの項目ごとに、2杯を行き来する
1杯目を最後まで評価してから2杯目に移るだけでなく、色調を両方、香りを両方、というように項目ごとに行き来してみます。記憶だけを頼りにする時間が短くなり、その場で差を書き足せます。見つからない違いを、無理に作る必要はありません。
色調:同じ背景で、中心と縁を見る
白い紙を背景に、2杯を同じ向きに傾けます。中心の濃さ、縁の色合いを比べ、「1は紫がかった赤、2は赤みが中心」のように書きます。色が近ければ「大きな差は感じない」で構いません。濃い方を自動的に高品質と評価しないようにします。
香り:共通点を先に、違いを後に
まず両方に感じた香りを探します。「どちらも果実が中心」と書いてから、片方は赤い果実、もう片方は黒い果実に近いかを見ていきます。最初に共通点を置くと、違いを見つけなければという気持ちに引っ張られにくくなります。
香りを軽く回す前後で確かめるなら、2杯とも同じように行います。1だけを何度も回し、2は注いだままにすると、観察条件が揃いません。時間による変化が出たら、どちらの何が変わったかを追記します。
味わい:酸味と渋みを一緒にしない
少量ずつ口に含み、甘味、酸味、渋み、ボディ、余韻を比べます。酸味による唾液が出るような感覚と、タンニンによる口の中が乾くような感覚は、別の手がかりです。この違いはWSETの解説でも説明されています。
「2の方が強い」と感じたら、何が強いのかを一段分けます。酸味なのか、歯茎に残る渋みなのか、口の中の重さなのか。一度水を飲んで間を置き、必要なら順番を逆にして確認します。疲れて違いが追えなくなったら、その日はそこで終えて構いません。
総合:好みと予想を別に書く
最後に、どちらが好きか、どんなワインだと思うかを、それぞれ理由と一緒に書きます。「1の軽やかさが好き」と「2の方がボディを強く感じた」は両立します。好みに合わせて観察の数値を動かす必要はありません。
比較メモは、観察と推測を分ける
次は説明用に作った架空の記録です。特定の品種の正解パターンではありません。まず、2杯の感覚を言葉で並べます。
観察
赤い果実の印象
渋みは穏やか
軽やかな口当たり
観察
黒い果実の印象
渋みが長く残る
1より厚みを感じる
候補にした理由と、まだ説明できない点を一つずつ。
この記録から「1と2は渋みと口当たりを違って感じた」とは言えます。しかし、これだけで品種や国は特定できません。予想を書くなら「2は以前飲んだワインに似ている。ただし香りは違う」と、似ている点と合わない点を一緒に残しておきます。
答えを見てから、「やはりその品種の香りだった」と元のメモを書き換えないことも大切です。予想が外れたら、どの観察を重く見たのかを読み返します。正解した場合も、たまたま選んだのか、説明できる手がかりがあったのかを確かめます。
過去の記録と比べるときは、範囲を読む
同時に開けた2杯の比較と、過去の記録の比較は、使い分けると便利です。前者ではその場の差を確かめられます。後者では、これまで自分がどんな言葉や評価を残してきたかを振り返れます。飲んだ環境や時期が異なることは、頭に置いておきます。
ワインブラインドノートでは、比較対象を最大2つ選び、色調、香り、味わい、総合の順に記録を並べられます。記録したワイン同士に加えて、品種の全体と特定の国、国同士なども比較できます。まずは今回飲んだ2杯を選ぶと、練習とのつながりがわかりやすいでしょう。

集計を見るときは、記録の数と範囲も確かめます。ある国を1回飲んだ記録は、その国のすべてのワインを代表しません。また「すべての国」には、比較している国の記録も含まれます。独立した2組の実験結果として読まず、自分のノートのどこが違うのかを探すために使います。
数字だけでは、どうしてその評価をつけたかまではわかりません。香りの強度や各項目のコメントも開き、「渋みが強かった」のか「余韻に渋みが残った」のかを読み返すと、次に見るべき場所が具体的になります。
次回の問いを一文だけ残す
比較の終わりに、次の練習で確かめたいことをひとつ書きます。「同じ品種をもう一度飲み、今回感じた渋みが共通するかを見る」「次は果実の香りを、名前だけでなく強さも記録する」。今回だけでは決められなかったことを、次の問いに変えておきます。
香りを表す言葉に迷ったら、香りの記録のコツへ。準備から確認したいときは、1杯から始めるブラインドテイスティングも役立ちます。2杯の違いを、ひとつ自分の言葉で説明できたら、その日の記録として残しておきましょう。